メインプログラム・アーティスト鴻池朋子Tomoko Konoike
              <アーティストコメント>
              
              さっき道で出会った野良猫に、明日また逢えるとは限らない。だから念の為、「じゃあまたね」と心で呟いてみるが、言葉で約束ができるのは人間だけ。だからそのまま別れ、そして二度と出会うことはないだろう。けれどもある時突然、思いもよらないことに、ばったりと再会する、ということが起きる。そういう時、人は「縁がある」という。いなくなった猫に、不意に道端で遭ってしまう。約束も信頼もなく、縁は嵐のように暴力的に両者を接続させる。言語でコントロールが効かない。こんなとき私は、「縁」とは人間の言葉の中で、最も翻訳不可能な限りなく動物寄りの言葉だと感じてしまう。そしてアートもこれにとてもよく似ている。人はまだまだ自然が持つ不明さを、その動物の中に多分に含んでいるみたい。
              私たちはどこまで人間でどこから動物なのかな。虫なのか、鳥なのか、風なのか、草なのか、土なのか。六本木アートナイトは境界線や分類が曖昧になり
              “どうぶつのことば” が飛び交うトポスになるかもしれない。
            
                
              
鴻池朋子
<プロフィール>
                絵画、彫刻、パフォーマンスなど様々なメディアと、旅によるサイトスペシフィックな表現で芸術の根源的な問い直しを続けている。
                近年の個展:2009
                年「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」東京オペラシティアートギャラリー、鹿児島県霧島アートの森美術館、2016年「根源的暴力」神奈川県民ホール、群馬県立近代美術館/芸術選奨文部科学大臣賞、2018年「Fur
                Story」Leeds Arts
                University、「ハンターギャザラー」秋田県立近代美術館、2020年「
                ちゅうがえり」アーティゾン美術館/毎日芸術賞受賞、2022年「みる誕生」高松市美術館、静岡県立美術館など。
                グループ展:2016年「Temporal
                Turn」スペンサー美術館・カンザス大学自然史博物館、2017年「Japan-Spirits
                of Nature」ノルディックアクバラル美術館、2018年「ECHOES FROM THE
                PAST」シンカ美術館、2022年「Story-makers」シドニー日本文化センターなど。著書に『どうぶつのことば』絵本(羽鳥書店)など。