アーティストインタビュー

六本木に舞い戻る!機械彫刻「ジャイアント・トらやん」

日時:3月28日(土)17:59(日没)〜 29日(日)18:00

壮大なスケールで夢のようなファンタジーの光景を次々と現実化してきた現代美術作家・ヤノベケンジさん。
その作品の根底には、幼少期に遊び場として過ごした大阪万博跡地“未来の廃墟”から得たインスピレーションが流れています。
「この“未来の廃墟”への時間旅行を擬似体験したとき、絶望感よりも使命感や期待感、自分が何かをつくっていかなければならないのではないか、何もなくなってしまったから何でもつくることができるんだ、というふうに勇気をもらったのです。」(ヤノベさん)
1990年代初頭より、実際に乗りこんで動かすことができたり、装着したりすることができる数多くの大型機械彫刻作品を制作。「現代社会におけるサヴァイヴァル」をテーマに、ユーモラスな形態に社会性のあるメッセージを込め、誇大妄想的な独自の世界観を構築しながら国内外で発表を続けています。
2004年には、森美術館で開催されたグループ展「六本木クロッシング」に、ヤノベさんの実父の腹話術人形『トらやん』を作品化した《森の映画館》を出展し、注目を集めました。
それから5年を経た今年、その『トらやん』が、巨大ロボット《ジャイアント・トらやん》となって、六本木に帰ってきます。3月28日(土)~29日(日)の一夜、六本木ヒルズで、衝撃的なパフォーマンスを繰り広げます!
「ゆかりの地に舞い戻れたことに運命を感じています。巨大ロボのトらやんが街を闊歩したり火炎放射するなどダイナミックな展開もしますが、今回はトらやん誕生秘話や、なぜ彼がこの時代にこの地に降り立ったか等の深い意味も明かしたいと思います。超豪華ゲストとのパフォーマンスやトーク等で素晴らしい化学反応が起こりそうですね。そして『トらやん』の可能性は止まることなく、あらゆる人々の創造力を刺激しながらこの世に増殖・拡大し続けています。これからどんなことが起こるのか、僕自身、非常に楽しみです」(ヤノベさん)」

矢延正信氏となにわのトらやん
矢延正信氏となにわのトらやん
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga
トらやん(オリジナル)
トらやん(オリジナル)
2004年/
96cm×45cm×33cm/ガイガー・カウンター、プラスティック、モーター、その他
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga

ヤノベさんの実父・矢延正信氏が定年退職後に始めた腹話術のパートナーとして購入したという、まさに腹話術人形。つぶらな瞳のかわいらしい少年の人形だったが、正信氏のダミ声腹話術が「容姿にそぐわない」と、当初、家族からは非難の嵐にあったとか。しばらくして後、バーコード頭にちょび髭、装いは阪神タイガーズのユニフォームに改造されて再登場。ダミ声も絶妙に合うようになり、ヤノベさんの作品《ミニ・アトムスーツ》をまとう姿になった時には、不思議な魅力と可能性に満ちあふれたキャラクターへと大変身。
大人と子どもの融合の象徴としてヤノベさんは『トらやん』をモチーフに幅広い作品展開を始めた。
歌が好きで、十八番はポーランド民謡「森へ行きましょう」。世界各国の言葉を話し、謎の宇宙語の呪文「チチ チナプポイナ ナチコレット チキチキパイプ チナデ チョイ チョイ」を唱える。

トらやん(1/1)
トらやん(1/1)
2004-05年/
96cm×45cm×33cm/
ガイガー・カウンター、プラスティック、モーター、その他
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga
森の映画館
森の映画館
2004年/228×218×218cm/ミクストメディア/豊田市美術館蔵
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga

オリジナルのトらやんをもとにつくられた1/1コピー。《森の映画館 *》という作品となって「六本木クロッシング」(2004年、森美術館)で初披露された。
「僕の作品であり、さまざまな創造のインスピレーションを与えてくれるイマジネーションの塊のような存在」(ヤノベさん)。オリジナル同様、世界各国の言葉を話し、宇宙語の呪文を唱え、ポーランド民謡「森へ行きましょう」を歌って踊る、いまや世紀のトリックスター的存在。

*森の映画館

2004年 228×218×218cm/ミクストメディア/豊田市美術館蔵

子供サイズの子供専用の映画館。上映される映画「トらやんの世界」は、戦時下における核攻撃から如何に生き延びるかを伝える教育番組になっている。小屋の内部は鉄板で覆われており、堅牢な核シェルターの機能も持つ。

ミニ・トらやん 「生きる」展(2007年、横須賀美術館)でのインスタレーション
ミニ・トらやん
2007年/
34cm×19cm×14cm/ガイガー・カウンター、プラスティック、その他
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga
「生きる」展(2007年、横須賀美術館)でのインスタレーション
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga

ビリケン商会とのコラボレーションによって2007年に登場したトらやん人形。
「生きる展―現代作家9人のリアリティ」(2007年、横須賀市美術館)では、《トらやん(1/1)》、《ジャイアント・トらやん》とともに大行進するインスタレーション作品へと発展し、「トらやんの大冒険」がいよいよ始まった。
近々、体長わずか10cmの《ミニミニ・トらやん》も誕生する予定。

ジャイアント・トらやん
ジャイアント・トらやん
2005年/
720cm×460cm×310cm/アルミニウム、鉄、真鍮、FRP、発泡スチロール
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga
ヤノベケンジ《子供都市計画》
ヤノベケンジ《子供都市計画》
(「21世紀の出会い-共鳴、ここ・から」2004-05年、金沢21世紀美術館)
(c.) Kenji Yanobe
photo: Seiji Toyonaga

体長7.2mに巨大ロボット化した『トらやん』人形。子どもの命令にのみ従い、歌って踊り、怒りのエネルギーで火を噴く子どもの夢の最終兵器。
《森の映画館》をきっかけに、ヤノベケンジは未来を担う次世代への壮大な贈り物として、大人たちがつくる子供のための未来の街建造プロジェクト「子供都市計画」(2004年10月~2005年3月、金沢21世紀美術館・プロジェクト工房*)を行った。半年間にわたる滞在制作を行い、大人も子供も含め総勢300名余のアーティスト、学生、地元市民の方々が参加。電車、ディスコ、市役所、テレビ塔等、計21個のさまざまな機能を持つパビリオンでミニチュアタウンをつくりあげていった。《ジャイアント・トらやん》は「子供都市」のシンボルモニュメントとして登場し、子供たちの呼びかけに魂を宿らせて誕生することとなった。

*ヤノベケンジ「子供都市計画」は、金沢21世紀美術館開館記念展「21世紀の出会い"共鳴、ここ・から」(2004-05年)の関連プログラムとして行われました。

こども芸術大学の子どもたちとのお別れ会(2009年、京都造形芸術大学内)
こども芸術大学の子どもたちとのお別れ会(2009年、京都造形芸術大学内)
(c.) Kenji Yanobe
photo: Koki Sengoku

《ジャイアント・トらやん》と子どもたち

2008~09年にかけての約1年間、京都造形芸術大学内に設置された際には、こども芸術大学(京都造形芸術大学芸術教育研究センター/幼稚園や保育園に並ぶ教育施設)の子どもたちに大人気。お別れの時には、たくさんの手紙が《ジャイアント・トらやん》のもとに届けられた。

Profile

ヤノベケンジ
1965年大阪府生まれ。91年京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。主な展覧会に、92年滞在制作「妄想砦のヤノベケンジ」(水戸芸術館)、2003年個展「メガロマニア」(国立国際美術館)、04年グループ展「六本木クロッシング」(森美術館)、04年滞在制作「子供都市計画」(金沢21世紀美術館)、05年個展「キンダガルテン」(豊田市美術館)、07年個展「トらやんの世界」(霧島アートの森)など。09年3/7~3/29「トらやんの大冒険」(豊田市美術館)、4/11~6/21「ウルトラ」の2つの個展も開催。


絵本「トらやんの大冒険」
2007年/240cm×225cm
(64ページ)/上製本
(c.) Kenji Yanobe

絵本「トらやんの大冒険」

2007年/240cm×225cm (64ページ)/上製本

ヤノベさんが初めて手掛けた絵本作品。ある夜の森で小さな太陽を拾った主人公・トらやんが旅へと出掛け、やがてたくさんの仲間とともに船を建造し、嵐を乗り越えて、小さな太陽を大きな太陽へと成長させていく冒険ストーリー。
1997年、アトムスーツを着て訪れたチェルノブイリの廃墟となった保育園で見つけた“人形”と“太陽の絵”の物語をモチーフに、それから10年の歳月に及ぶヤノベさんの実体験と、これからの未来への夢と希望のメッセージが凝縮された、かけがえのない一冊。
個展「トらやんの世界」(2007年、鹿児島県霧島アートの森)以降、インスタレーション作品の一部としても発表されている。
絵本「 トらやんの大冒険 」(著者:ヤノベケンジ、発行:Akio Nagasawa Publishing)
[通常版] ISBN 978-4-903545-16-5 C00 71 ¥1,890
[特装版] ISBN 978-4-903545-17-2 C0071 ¥3,990

絵本を読む《トらやん》と《ミニ・トらやん》 絵本「トらやんの大冒険」より
絵本を読む《トらやん》と《ミニ・トらやん》
(c.) Kenji Yanobe
photo: Miwa Ohba
絵本「トらやんの大冒険」より
(c.) Kenji Yanobe

「六本木アートナイトにジャイアント・トらやんが登場!予告編を動画でチェック
六本木アートナイト×ヤノベケンジ
「ジャイアント・トらやんの大冒険」
予告編ムービー
→(Quick Time)
→(Windows Media Player)

ジャイアント・トらやん」解体新書

「ジャイアント・トらやん」について深く知ったら、さらに六本木アートナイトは楽しいイベントになることでしょう。誰にでもわかる「ジャイアント・トらやん」図鑑です。

PROFILE

2005年3月
2005年3月、ヤノベケンジと「子供都市計画」のプロジェクトに参加した大勢のアーティスト、学生、地元市民との協働作業によって誕生(金沢21世紀美術館・プロジェクト工房にて)。同美術館の中庭で初のファイアーパフォーマンスを行う。
2005年6月
2005年6月、個展「キンダガルテン」(豊田市美術館)で初めて立ち上がり、歌って踊る姿を披露。前代未聞の美術館内でのファイアーパフォーマンスには、約1,000人の観客が訪れた。
2006年10月
2006年10月、「縄文と現代」展(青森県立美術館)でのファイアーは遮光器土偶とのコラボレーションパフォーマンス。
2007年7月
2007年7月、「生きる」展(横須賀美術館)で巨大ラッパ型彫刻作品《フローラ》と融合した《ジャイアント・トらやん》は、MASとPasadenaとの特別ライブ“The Day of Torayan”を行った。「世界を照らす“太陽”を再び取り戻そう」との呼びかけに、観客の心は一つになり、魂の叫び「僕らの上に太陽を!」を熱唱。台風直下の天候とも相まって渾然一体となるファイアーパフォーマンスはいよいよ伝説となった。
2008年〜2009年
その後、個展「トらやんの世界」(鹿児島県霧島アートの森、2007年8月~9月)、京都造形芸術大学内での長期展示(2008年3月~2009年2月)を経て、東京・六本木へ舞い戻る。

ジャイアント・トらやん

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